*ニラミギンポ黄化個体?婚姻色?2013/11/21 07:17

ニラミギンポと言えば,
全身黒くて,所々青筋が入り,尾鰭が黄色,
というイメージがありますが,
こんな個体を奥様が発見しました。

ニラミギンポ(色彩変異)
撮影者:どこせん奥様
撮影地:坊津(鹿児島)
撮影機材:ニコンD7000/105mm F2.8マクロ
撮影データ:SS1/125秒,F11,ISO100

ここまで体色が明るいと,
一瞬ハナダイギンポか?思ってしまいましたが,
どうも,ニラミギンポの黄化個体のようです。
(婚姻色なのでは?という意見もあります。)


ニラミギンポ(色彩変異)
撮影者:どこせん奥様
撮影地:坊津(鹿児島)
撮影機材:ニコンD7000/105mm F2.8マクロ
撮影データ:SS1/125秒,F5,ISO100


(本村浩之; 出羽慎一; 古田和彦; 松浦啓一)
によると,
ニラミギンポ(p303)の色彩に関する説明の中で,

ーー以下抜粋
色彩 体側は尾柄部を除き黒色で、 
尾鰭を除く各鰭条も黒色。 
尾柄部から尾鰭にかけて鮮やかな黄色。 
生時には頭部、 体側に青白い模様が
みられる個体もいる。 
硫黄島では本種の色彩変異とみられる標本も
採集された。 
体色は頭部 ・ 背鰭 ・ 臀鰭 ・ 尾柄部から
尾鰭にかけては濃い黄色、 胸鰭後部から
尾柄部にかけては灰色がかった黄色をしている。」
ーー抜粋ここまで

という記載があり,
前掲の写真の個体とよく似た標本写真が
掲載されています。
この資料を作成された研究者の方々は,
婚姻色という一時的な変化ではなく,
常態的な色彩変異(黄化個体)という捉え方を
しているようです。


ニラミギンポ(色彩変異 yg.)
撮影者:どこせん旦那
撮影地:坊津(鹿児島)
撮影機材:ニコンD70s/105mm F2.8マクロ
撮影データ:SS1/200秒,F10,ISO200

さて,この個体は,体色はしっかりとした黒ですが,
尾柄部から尾鰭に加えて,背鰭が黄色になっており,
オーソドックスな黒いニラミギンポと,
黄化個体のニラミギンポの中間的な色彩を呈しています。
色彩変異にもいろいろなバリエーションがありそうです。

ニラミギンポはいるところにはやたらといる,
いわゆる普通種ですが,
こうしてみると,意外に解明されていない部分も
残されているようですね。
分布している地域差によるものなのか,否か,
婚姻色との関係はあるのか,ないのか,
サンプルを増やして考察していく必要があります。
今後はスルーせずに,
努めて全身写真を撮るように心がけます。

*生態写真稀少?セグロイトベラ2013/11/17 12:20

長崎・辰ノ口の水深-20m付近。
大小の岩が散在する砂地に,
これまで見かけたことのない姿が目に入りました。

そのときはあまり気にも留めず,
あとで名前を調べられるようにと,
数カット撮影してその場を去りました。

「日本のベラ大図鑑」で調べたところ,
セグロイトベラではないかと思われます。


セグロイトベラ
撮影者:どこせん旦那
撮影地:辰ノ口(長崎), -20m
撮影機材:ニコンD7000/105mm F2.8マクロ
撮影データ:SS1/125秒,F10,ISO250

「日本のベラ大図鑑」の著者,
西山一彦氏によると,
「雄成魚は尾鰭上部から中心部にかけて,
斜めに黒色線が走る。
環境や状態によって体色が変化する。
潮通しのよい,きれいな砂地に点在する岩礁,
サンゴ域などに生息する。
深い水深の綺麗な砂地を好む。稀種
オーストラリア北西部,南日本太平洋岸,
伊豆諸島,小笠原諸島,琉球列島に分布。」
とのことです。
(「日本のベラ大図鑑」および著者ブログより抜粋)

また,雌雄共に(イトベラは雄のみ)
背びれの前方に,黒斑があることが本種の特徴で,
上の画像でもかろうじて確認できます。
これが「セグロイトベラ」の名の由来かもしれません。

ネット上で画像を検索してみましたが,
数えるほどしかヒットしませんでした。
とりたてて美しいというわけでもなく,
形,色,模様ともわりと地味な感じですので,
あえて被写体に選ばれることが少ないのでしょう。
知る人ぞ知るといった感じの隠れた稀種ですね。


参考サイト


通常は水深-30mを超えるようなところで
見られるようですが,
このときは水深-20mくらいのところに,
3〜4匹ほど集まってスイスイと泳いでいました。
体長10cmくらいだったので,
おそらく成魚であろうと思われます。

全国的世の中的には稀種だけど,
辰ノ口では普通種なのか,
普段は姿を見せないけど,
何らかの理由で(例えば繁殖とか)
たまたまここにきていたのか,
気になるところです。要観察。

まだまだ知らないことが湧き出る長崎・辰ノ口です。


下の画像は坊津で撮影したものです。

セグロイトベラ
撮影者:どこせん旦那
撮影地:坊津(鹿児島), -40m
撮影機材:ニコンD7000/105mm F2.8マクロ
撮影データ:SS1/125秒,F10,ISO200



*極チビピグミー2013/11/14 21:00

坊津の海でもおなじみとなった,
会いにいけるアイドル,ピグミーシーホース。
現金なもので,いつでも会えるとわかってしまうと,
ついつい,スルーしてしまうこともよくある話で,
第一発見者として,少々申し訳ない気もします。

でも最近,とても悲しいことになっていました。
住処となっていたイソバナの一部が折れて,
どこかになくなってしまっており,
それに伴ってかどうかは謎ですが,
複数いた個体が,
たった1匹になってしまったそうです。

この2年間,元気にコロニーをつくって,
安定して平和に暮らしていただけに,
単なるお引っ越しとも思えず,
にわかには信じられない出来事でした。

ピグミーシーホースは,生涯一夫一婦制だそうです。
今回の出来事で,つがいの関係が壊れていたとしたら,
とても悲しいことです。

また賑やかなコロニーに早く復活してほしいと
願いつつ,孤独となってしまった家主の様子を
お見舞いに訪れました。

潮の流れがやや強く,イソバナのポリプが開き加減で,
写真映えするシチュエーション。
押し並べて単調な風景になってしまいがちな
ピグミーシーホースの写真に
ありがたいアクセントを与えてくれます。

見慣れた個体をやすやすと見つけ出し,
ファインダーをのぞいて撮影を始めた奥様が,
突然,聞き取り不能な大声を上げました。
驚いて,近づいた私(旦那)の目の前に
差し出されたスレートに走り書きされたコメントは,
「子ども産んどる,2匹産んどる」

慌てて,目をこらしてよくよく見てみると,
成魚の頭くらいの大きさしかない,
およそ5mmくらいの極小サイズの個体が2匹,
イソバナの枝にしがみついていました。

ピグミーシーホース/幼魚
撮影者:どこせん旦那
撮影地:坊津(鹿児島)
撮影機材:ニコンD7000/105mm F2.8マクロ
撮影データ:SS1/125秒,F16,ISO1
00

大人の個体を撮影していたら,
カメラを動かした拍子に,ファインダーの中に,
チラッと白い小さなものが映ったそうです。
身内ながら,奥様の鋭い眼力に脱帽です。
頼りになります。

ピグミーシーホースという呼称自体が,
極小のタツノオトシゴということですが,
通常サイズの親が巨体に見えてしまいます。

大人の個体とは少し離れていたため,
並べてサイズ比較できるような撮り方ができず,残念。
あまりの小ささに体がほとんどイソバナの枝に
隠れてしまっています。

せっかくポリプ全開のおいしい場面ではありましたが,
今回は初見のため,フォーカス重視で絞って撮影です。


撮影者:どこせん旦那
撮影地:坊津(鹿児島)
撮影機材:ニコンD7000/105mm F2.8マクロ
     クローズアップレンズ使用
撮影データ:SS1/125秒,F16,ISO1
00

突き出た口元がなんともチャーミング。
唇が鮮やかなピンク色。
口の中心に穴があいているのがよくわかります。
この口で小型の動物プランクトンやベントスなどを
吸引して補食するらしい。

ちなみに,ピグミーシーホースは,
シーホースすなわちタツノオトシゴ属のうち,
3cmに満たないような小さな種の仲間の総称です。
サイズの境界線の定義は明確ではないらしく,
研究者によって,とらえ方が違います。
また,固有種や,詳しい精査が必要な種,
通称ジャパニーズ・ピグミーシーホースのような,
未記載種もまだありますから,
今後の発見や研究の動向にも要注目です。

参考サイト


写真掲載したピグミーシーホースは,
バージバンティピグミーシーホース

(Hippocampus bargibanti)

です。
日本でも発見されてからかなりの年月が経ちますが,
標準和名は未だ決まっていないようです。
すでにピグミーシーホースという名前が,
世間に浸透してしまってはいますが,
英名をそのまま使うというのはないでしょうし,
「ピグミー」という用語が侮蔑的であるという考え方も
あるようですから,最近の流れからいくと,
やはり別の名前が用意されるのではないかと思います。

何はともあれ,繁殖を確認することができ,
失意から希望へと大きく転換です。
コロニー復活祈願。