未知なるヨコエビの世界(再び)@辰ノ口

お目当ての生き物がなかなか見つからず,
あきらめ感が漂いつつあったとき,
ふと顔をあげると,奥様が指さすヤギの先っぽに
あまりの小ささにゴミとしか思えない物体が。
ファインダー越しにのぞいてみると,
最近はまってきたあの姿。

ヨコエビの仲間
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NIKON D7000-105.0 mm f/2.8 /露光量1/125 秒 (f / 13) / ISO 100

形は志賀島で見つけたものと似ているので,
ドロノミ科ドロノミ属の一種ではないかと思います。
フレーム中央の個体のサイズでも2mmくらいですが,
その周りにさらに小さな生き物たちがわんさかといます。
どうもこの個体の子どもたちのようです。
東京湾のヨコエビガイドブックによると,
ヨコエビの仲間の子どもたちは産まれてからしばらくは,
親元を離れずに暮らしているそうです。
これが子育てと言えるかどうかはわかりませんが,
甲殻類の仲間は,ほとんどが卵を産みっぱなしで,
親と子は広い海の中で互いに出会うことがない
というのが一般的なことなので,
極めて稀な生活スタイルであると言えます。

 

ヨコエビの仲間
_DST3785


NIKON D7000-105.0 mm f/2.8 /露光量1/125 秒 (f / 13) / ISO 100

よく見ると,黒やオレンジのドット柄で
こっそりおしゃれ。

 

–以下 旧ブログに投稿したものを再掲

 

志賀島でどこせん旦那がついはまって撮影したもの。
ヨコエビの仲間
NIKON D7000-105.0 mm f/2.8 / 露光量1/125 秒 (f / 16) / ISO 100
ヨコエビの仲間(同一個体の腹側から撮影)
NIKON D7000-105.0 mm f/2.8 / 露光量1/125 秒 (f / 16) / ISO 100
ヨコエビの仲間は,ワレカラなどと同じ端脚類に属します。
日本国内で300種以上が報告されているそうですが,
海の生き物の図鑑や甲殻類を紹介した図鑑にも
ほとんど掲載されていません。
素性が全く分からないので,
仕方なく,ネットで画像検索をして探していると,
こちらのページに掲載されているものに似ていました。
ヨコエビの一種(Podoserus sp.)
として紹介されています。
さらに引き続き調べていると,
なるものが東邦大学理学部の東京湾生態系研究センター
のサイトで頒布されていることがわかりました。
東邦大学理学部生命圏環境科学科2010年度4年生の
小川洋氏が卒業研究のテーマとしてヨコエビを研究し,
その成果をガイドブックの形にまとめたのだそうです。
一般にはほとんど出回っていない貴重な研究資料
私たち素人にもとても分かりやすい形で
しかも無料で公開されていることにとても感謝です。

 このガイドブックによると,
今回見つけたヨコエビの仲間は,
ドロノミ科ドロノミ属の一種の
Podoserus Brasiliensis
(ポドセルス・ブラシリエンシス)
に近いようです。

 学名にあるように,南米など南半球を中心に分布しており,
外来種の可能性があるとのこと。
体長わずか2,3mmしかない
小さな小さなヨコエビの世界を訊ねることで,
大きく広い海のつながりを改めて実感したのでした。