*ピンボケでも時には可 ― 2014/01/27 00:31
ハナビラクマノミ
撮影者:どこせん奥様
撮影地:奄美大島(鹿児島)
撮影機材:ニコンD7000/105mm F2.8マクロ
撮影データ:SS1/200秒,F11,ISO100
ふんぞりかえってこちらを見下しているような
不敵なハナビラクマノミの表情が素敵です。
ところで,
写真を撮るときは,まずはメインとなる生物の目に
ピントをビシッと決めることに注力してます。
うねりがあったり,暗かったり,
被写体の動きが速かったりして,
フォーカシングが難しい状況にあると,
そこにほとんどのエネルギーを注ぎ込んでしまう
ということもしばしばあります。
でも最近の水中写真の動向を見ていると,
ピンぼけ写真やわざとピンをずらした写真であっても,
それはそれで作品と言ってしまえばOK
といった流れもあるようです。
あえて意図的にピンを外して,
アーティスティックな作品を求めたのか,
それとも意に反して失敗したピンボケ写真が
偶然面白い効果を発揮してしまったのか,
撮った本人にしかわからないことです。
(状況さえ整えば写真を再現できるかどうかで,
どちらであるかは判別可能だとは思いますが)
でも,どちらであっても,
撮った本人がいいと思い,
それに共感してくれる人がいるのであれば,
その写真はいい写真なのでしょう。
ピンボケ写真が即ゴミ箱行きとはならず,
日の目を見るチャンスが広がるということは,
アマチュア写真家にとっては
非常にありがたいことです。
そういえば,
2012年5月に出版された,
鍵井靖章さんの写真集「海中散歩」には,
1ページ目を開くや否や度肝を抜かれました。
しばらくの間,その写真に釘付けになったまま
頭の整理がつかず,声を失ってしまいました。
そこには,ウミシダを背景にして
体をしならせて泳ぐキンギョハナダイの姿が,
ハイキーでパステル調に表現されていたのですが,
ピントは,眼からは大きく外れていて,
鱗と背鰭のほんの一部分だけにきている上に,
あろうことか,肝心のキンギョハナダイの顔が
フレームアウトしているのです。
被写体のディテールは削ぎ落とされ,
主体すらほとんど曖昧にされて,
ただ,光と色と形と動きのイメージだけが
ほんわかと柔らかく表現されていました。
初めは全く理解に苦しみましたが,
ピントやフレーミングのことはともかく,
全体として美しく目を惹く写真であることには
間違いありません。
これまで自分が撮った写真は,
思ったところにピントがきてない段階で,
ボツ写真と見なしていましたから,
正直言ってこの写真には衝撃を受けました。
にわかには受け入れられませんでしたが,
「そうか,これでもいいんだ」ということに
気づかせてもらった貴重な体験でした。
この写真も普通なら明らかに失敗写真なのでしょうが,
個人的には割と好きな写真です。
シライトイソギンチャクのゆらめきが
妖しげでとてもきれいなのと,
完全にピンボケしたハナビラクマノミは
ゆるキャラ的なおとぼけ感が醸し出されて,
全体がほのぼのとした雰囲気になり,
何となく癒される感じが気に入りました。
柔らかな雰囲気を大切にしたいときには,
わざと切れ切れのジャスピンフォーカスにしないことも
意外と効果的であることに気がついた次第です。
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